夢想神傳重信流
開祖は林崎重信です。その業は、代を経て土佐藩に伝えられます。剣聖中山博道師が土佐の細川義昌師に師事され、居合道を学ばれました。義昌師没後に伝書を授けられ、山口県の木村栄寿師に伝えられたのが、夢想神伝流です。
「大森流」「英信流」「奥」(他流では、初伝・中伝・奥伝という)と三つの段階で学びます。「大森流」は、正座による業。「英信流」は、立て膝による業。「奥」は奥義となる業です。木刀によって二人で打ち合う形として「太刀打ち業」「詰合」があります。
当流の極意は、最後の最後まで人は斬らないというところにあります。人を殺さず、生かすための武道です。

初発刀
「大森流」の1番目の業です。夢想神傳重信流の一番最初の業ということになります。正座で向かい合う敵の殺気を感じ、敵が刀に手をかけるのを見て、自分も刀に手をかけます。敵が刀を抜くから、自分も抜く。刀が鞘を離れる一瞬、自分の刀が敵よりも早く抜き付けます。切っ先を敵の目前に突きつけ、敵が「参った」言えば刀を納め、向かってくるようなら一刀のもとに斬ります。
真後ろに座っている敵に対応する「當刀」という業もあります。

流 刀
「大森流」の6番目の業です。正座による業です。左から敵が刀を抜いて近づいてきます。刀を抜きかけながら様子を見ます。敵が斬っ てくるので、右膝を突き左足を踏んだ形で、頭上で敵の刀を受け止めます。敵の刀を流して、敵の腰に自分の刀を打ち込みます。
写真は、敵の腰に刀を打ち込む直前の姿です。目線をご覧下さい。仮想敵がどこにいるのかが、まさまざと想像できるような現実感のある演武です。

三 角
「奥」の5番目の業です。正面と左右の三人の敵と対します。正面の敵を右片手で斬りつけ、右の敵を諸手で斬ります。左肩をかばいながら回り、左の敵を斬ります。
正面の敵を斬っている間に左右の敵が襲いかからないかということです。この業は、位業といいます。敵を圧倒する気によって相手の動きを制します。